2006年02月01日

中国のインターネット規制(2)

中国のインターネット規制システムは世界でもっとも洗練された、完成度の高いものであると言われている。中国政府の規制は、規制対象によって国外サイトに対するものと、国内サイトに対するものとに分かれる。

(国内サイトの規制)

アメリカ国務省の調査によれば、中国にはインターネット規制のために少なくとも3万人以上の専門家が政府職員として雇われており、政府の意図に反するインターネット利用者(政府・共産党への批判など)を取り締まっている。更に当局にとって好ましくないネット使用者を取り締まるために、全国に警察要員が配置されており、ホームページや個人メールを検閲して、政府・共産党にとって有害な情報を探し、その当事者を取り締まっているという。
(ソース:北口堂通信 http://takachyan.exblog.jp/2064473
たとえば、先日の反日デモの後には、諸外国からひんしゅくを買ったデモの再発を防ぐために、中国当局はこれらの要員を使って、デモを呼びかける愛国サイトを閉鎖させたり、掲示板への書き込みを禁止したり、電子メールに制限をかけるなどの対策をとった。

なお、国境なき記者団が2003年に中国のWebサイトで制限されているコンテンツを調査した結果、フォーラムに掲載されたメッセージの60%が、投稿から1カ月以上にわたってオンラインに残っていたが、政府の批判などのコンテンツを含むメッセージに絞ると、この数字は55%にまで下降したと報告されている。また、その55%のうち半分以上は、その後フォーラムの管理者によって削除されたと言うことである。(ソース:IT media News 2004/05/21 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0405/21/news053.html)


(国外サイトの規制)

国外サイトについては、直接的な閉鎖命令は不可能なので、途中でアクセスを遮断する方法がとられている。「中国のインターネット規制(1)」で紹介したウィキペディアやジオシティーズ、各種ブログサイトへのアクセス遮断措置などがこれにあたる。
中国国内からインターネット経由で国外のサイトに接続する場合、政府が管理する6つの仲介コネクションを経由しなければ中国から外にでることができないようになっている。
そこで、このゲートウェイと大防火壁(グレート・ファイアーウォール)といわれるシステムを利用して、特定のサイトへの接続を遮断したり、電子メールに「みんしゅしゅぎ」「たいわんどくりつ」などの特定用語があった場合にそれを自動削除したりしているとのことである。

ただし、中国政府は、外国のサイトへのアクセス遮断を実施している事実を公式には認めていない。このため、実際のインターネット検閲がどの程度の範囲でおこなわれているか知ることは困難である。


(米国研究者による中国のインターネット規制状況の調査)

中国におけるインターネット検閲の範囲については、米国などの大学で研究がおこなわれている。たとえば、ハーバード大学を中心とする「インターネットと社会のためのバークマン・センター」(Berkman Center for Internet & Society)が2002年に実施した調査によると、日を違えて中国内の異なるプロキシサーバ2台から20万以上のWebサイトにアクセスしようとしたところ、1万8931件のサイトにアクセスできなかったという。
遮断されたWebサイトの大半は性的な表現が含まれるものだったが、中には報道、健康情報、教育、娯楽などの情報を提供するサイトも含まれていた(上記センターのウェブサイトに詳細な報告書がある。http://www.opennetinitiative.net/)。
ちなみに、イギリスのBBCの報道(2002年12月4日「China blocks news not porn online」)によれば、中国ではポルノサイトよりもニュースサイトの方が多くブロックされているとのことである(http://news.bbc.co.uk/2/low/technology/2540309.stm)。

上記の「インターネットと社会のためのバークマン・センター」は、ハーバード大学 (米国)、トロント大学 (カナダ)およびケンブリッジ大学 (イギリス) の共同プロジェクトであり、中国だけに限らず、いわゆる言論統制の著しい国家によるインターネット監視およびフィルタリングにを対象として、中立的な立場から調査、公表および分析を行なっている。中国以外では、ビルマやイラン、シンガポールなどが調査対象となっている。
冒頭の「中国のインターネット フィルタリング体制は、その種のものとしては世界で最も洗練されたものだ」という評価は、この研究センターの報告書にある言葉である。
同センターによれば、中国政府は、政府機関、公人および民間人からなる精巧なシステムを構築して、インターネット上の情報へのアクセスを制御し、「制限対象情報」の流れを取り締まるために、あらゆる手段をとっているらしい。中国の規制当局によるフィルタリングは、ネットワークのバックボーンレベルで行なわれており、更に各プロバイダもそれぞれ独自の規制システムを持っている。中国の「フィルタリング体制」は、他の国々のシステムと違い、極めて多数のポイントで統制を行なっており、動的な性格を持ち、時とともに手法を様々に変化させている。
(参考:Japan.Internet.com Webビジネス2005年4月18日:http://japan.internet.com/busnews/20050418/11.html


(インターネット監視、規制システムは米国製)

中国が採用しているインターネット規制システムは、主として米国のサンマイクロシステムズが開発を請け負ったものであると言われている。なるほど、先進的で洗練されているはずである。
また、最近の報道によれば、米マイクロソフトは、インターネット上で自分の意見などを書き込めるブログの開設サービスの中国版「MSNスペース」で、中国政府に協力して書き込みの検閲をおこなっていたことを明らかにした。「じゆう」「みんしゅしゅぎ」「じんけん」などの言葉を書き込もうとすると、「それらの言葉は禁止されています。他の言葉に置き換えてください」というメッセージが表示され、政府にとって好ましくないテーマの書き込みはできない仕組みになっている。
自由の国アメリカの企業も、巨大市場でのビジネスのためならば言論規制にも喜んで協力するということだろう。


(Googleの対応)

米国のGoogleは、先日ウェブ検索記録のデータ提出を求める米国政府の要請を突っぱねて、プライバシー擁護を主張する人々から称賛を浴びた。
しかし、このGoogleも、中国政府への対応には苦慮している。Googleは、中国語圏向けのサービスを提供するサーバーを米国から中国国内に移設するに際して、当局の求めに応じて、特定の単語での検索をシャットアウトするように検索システムを変更したとのことである。
(出典:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060125-00000030-dwj-bizなど)
Googleはすでに2000年から米国内のサーバーを利用して中国語での検索サービスを提供してきたが、先月から検索の速度アップのためにサーバーを中国国内に移転した。上記の措置はこれに伴うもの。
なお、Googleは当局の指導に服する一方で、Google社が利用者に危害を及ぼすことを避けるために、ブログや電子メールなど個人が作成するコンテンツは中国内では当面ホストしない方針とのこと。これは、少し前に中国のヤフーが当局の求めに応じて個人ユーザー(ジャーナリスト)の情報を提供し、それにより逮捕者が出たことを意識しているものと思われる。
また、Googleは、ユーザーに対して表示された検索結果の下に検閲に関する注意を喚起する短い通知を掲載することを検討している。しかし、この点については、中国政府がこのような通知の掲載を許可するかどうか、今のところ不明らしい。


(被規制サイトを調べるには)

中国在住の我々にとっては、接続規制は日常的なことなので既にあきらめの気分である。
なお、外国在住の方でも、あるサイトが中国においてアクセス遮断されているかどうかを知ることが可能である。「Real-Time Testing of Internet Filtering in China」というハーバード・ロースクールのサイトで簡単に調べることができる(http://cyber.law.harvard.edu/filtering/china/test/)。
このサイトは、上述の「インターネットと社会のためのバークマン・センター」とBenjamin Edelmanが共同で実施している中国の検閲政策に関する研究サイトであり、中国内のプロクシを利用して、中国から国外のサイトにアクセスした場合の状況をリアルタイムでチェックすることができる。
興味のある方は、普段自分が日本で見ているサイトが中国で閲覧可能かどうか試してみてはいかがでしょうか。(追記:2011.4現在、このサイトは運用されていない模様です。)






posted by 陳ゆう at 01:38 | 雑記帳 インターネット事情 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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