2011年04月05日

雲崗石窟 山西省

(2006年4月1日記)

春節の休みに山西省の雲崗石窟に行ってきた。

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簡単な旅行記を書いてみたいと思う。

雲崗石窟は、以前から中国で最も行ってみたい場所のひとつだった。
そう思い始めたのはもう10年以上前、将来中国で暮らすことになるとは想像もしていなかった頃のこと、写真集で見た石仏の、あまりに聡明な表情に魅了された。

それほど雲崗に興味を持っていながら、なぜ中国生活6年目の今まで行かなかったかというと、北京から汽車で6時間程度の場所なので、「どうせいつでも行けるから」と思って伸ばし伸ばしにしてきたのである。

実は、5年ほど前、中国に来て半年くらいの時に、一度、行きそうになったことがある。「行きそうになった」と言うのは、北京駅で大同行きの汽車の切符を買うところまでは実行したからである。
山東省の省都である済南から夜行バスで北京についたのが朝の5時。そのまま北京駅に行って切符を買うところまでは行ったが、午前10時頃の発車時刻までに気が変わり、なぜか大連に行きたくなり、結局その日のうちに大連に飛行機で飛んでしまった。このときの切符は未使用のまま手元に残った。

5年前の切符はさすがにもう使えないが、今回、ついに念願の雲崗石窟に行ってきた。


北京へ

上海から北京へは夜行の汽車で。
硬臥(2等寝台)なら270元くらい。
1400キロを寝台車で移動して日本円で4000円程度なので、非常に経済的と言える。
車内はこんな感じ。

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これはあまり新しくない硬臥車両である。同じ硬臥でも、新しい車両は足元にパーテイションがついているし、枕元には個別のスポット照明がついていて消灯後も本を読むことができる。

話はそれるが、この「消灯」に関して今回発見したのは、上海−北京間の寝台車は消灯時刻が遅いということである。確か、11時くらいだったと思う。
むかし河北省から遼寧省の瀋陽まで乗った寝台車では、9時頃に消灯となり、車内は真っ暗になってしまった。ここまで早いのは極端としても、10時頃には消灯になるのが普通である。
このあたりは、夜更かしの上海っ子と北京っ子に配慮しているのか。

汽車は朝の9時頃に北京駅に到着。
まず、地下鉄に乗って、これも前から行きたいと思っていた毛主席記念館に向かった。ここも色々な意味で相当に面白かったので、また改めて何か書くかも知れない。

毛主席記念館を堪能した後、午後の汽車で大同へ向かった。大同行きの汽車は北京西駅から1日に数本出ている。北京−大同間の所要時間は汽車によって違うが、私がこの日乗ったのが最速のバージョンのようで、所要時間5時間半程度。遅いのだと8時間くらいかかる。
なお、夜行の寝台列車も便利だが、途中の景色が結構面白いので、少なくとも往復のどちらかは昼の汽車にすることをお勧めします。

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途中の山岳地帯

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ときどき見える万里の長城


大同に着いたら既に夜8時を回っていた。まずは駅前の2つ星ホテルに宿をとる。1泊180元を値切って120元。ちなみに、日本人は中国では何でも際限なく値切れると思っている人がいるようだが、もちろんそんなことはない。ホテルの値段にしても、言い値を聞いた後で「便宜一点行不行?」と駆け引きなしで尋ねて、相手が答えた値段が普通は「相場」である。それ以上しつこく食い下がることは、地元の中国人でもあまりしない。する人もいるが、そういう人はいわゆる「変な人」ということになる。

このホテルは、部屋のシャワーを開けたとたんにコーヒー色の水が吹き出るなどやや問題もあったが、寒冷地のホテルらしく暖房だけは文句の付けようのない出来だった。ボイラー室で地元産出の石炭をガンガン焚いているに違いない。戸外はマイナス10度以下なので、私としては、とりあえずそれで満足だ。

ホテルに荷物を置いた後、夕食を食べに外に出た。
部屋の窓から見つけた「弓削面」の店に行く。
「弓削面」は最近では日本でも有名になった。ナイフで面を削りだして鍋に落とし、茹で上げる面である。

そう言えば、「弓削面」と言えば、昔、東京の青山一丁目の高級中華料理店で、「中国から招いた著名な弓削面職人」の実演を見せてもらいつつ食べたことがある。そのときは、それなりに感心しつつ食べたように記憶している。
しかし、今回あらためて弓削面を食べて、あの青山の中華料理店が中国から「特別に招いた」という「弓削面職人」は名前倒れだと思った。はっきり言って、大同の駅前の一杯2.5元(約35円)の弓削面の方が、コシがしっかりしていて100倍うまい。まあ、食べる環境という要素もあるかもしれないけれど。

さて、大同は中規模都市であるが、夜9時を過ぎると店は殆ど閉まっており、都心でもあまり人通りはない。やっと見つけたインターネットカフェでメールチェックをした。
ここで感心したのは、なぜか身分証明書の提示を求められなかったこと。上海のインターネットカフェでは必ず身分証明書の提示を求められ、番号を控えられる。特に昨年後半あたりから、公安当局の指導が極めて厳しい。
大同市も中国国内で、それも一応そこそこ有名な中都市だけど、このあたりまでくると、法令はあまり厳格に適用されなくなるらしい。地元の公安当局があまり熱心でないのだろう。なんとも中国的である。


雲崗石窟へ

翌朝は6時に起きて雲崗石窟に向かった。
なぜこんなに早起きかというと、午後1時の汽車に乗って北京に戻らなければならないからである。北京からは、その日のうちに上海行きの夜行列車に乗るつもり。

これだけ早いとホテルの食堂も開いていないので、朝食準備作業中の厨房にお邪魔して、饅頭と漬物だけ食べさせてもらってホテルをチェックアウト。

駅前からバスを2本乗り継いで雲崗石窟に向かう。
雲崗石窟は大同市街からそれほど遠くない。しかし、バスが強烈にぼろくてスピードが出ないので、1時間くらいかかった。

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こういうバスであるし、乗客も地元の炭鉱関係者が多いので、タクシーで行った方が良いかも知れない。
しかし、さすがに世界遺産の雲崗石窟を通過するバスだけあって、乗るときに「雲崗石窟に行く」と伝えておけば、車掌さんが気に掛けてくれて、降りるバス停を教えてくれる。このときは雲崗石窟のバス停で降りたのは私だけだった。
バスを降りたらすぐ目の前が雲崗石窟である。


雲崗石窟

雲崗石窟については、特にコメントはしない。一部の写真のみ掲載する。しかし、写真では本物の雰囲気は感じられないので、興味のある方は是非ご自分で行って見ていただきたい。入場料は確か60元である。

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全景

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最も有名な第20窟

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比較的初期の小規模石窟群


炭鉱の町

大同は炭鉱の町だ(と言うか、山西省全体が炭鉱だらけである)。
大同市内に戻る途中でバスが立ち寄った炭鉱で降りてみた。大きな炭鉱らしく、一つの炭鉱が一つの町を形成している。入り口には炭鉱の名称を掲げた立派なゲートがあり、その下を老若男女、子供から老人までが出入りしている。人の流れを眺めているとゲートの向こう側に一つの町があることが良く判る。

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ゲート

川沿いの幹線道路わきにこのゲートがあり、ここから橋を渡って炭鉱街に入る。橋の向こうには中国工商銀行や大きな病院が見える。

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ゲートの横には炭鉱街内部の交通機関らしいバイクタクシーが沢山待機している。たぶん、中は相当に広いのだろう。


大同から北京、そして上海へ

この日の北京行きの汽車はどれも満席で、私は「無座」(立ち席)のチケットしか購入できなかった。しかしさすがに「無座」だけあって値段は安い。わずか29元。この値段で、6時間をかけて300キロを移動する。

中国の汽車は車両連結部のデッキが広いので、私はそこで壁にもたれて立っていた。壁にもたれている背中が暖かく感じられるのは、壁の向こう側に石炭ボイラーがあるからである。もちろん、石炭で走っている訳ではなく、車内暖房用のスチームを作っている。途中で1回、係員が石炭をくべに来た。6時間の走行時間で途中1回追加するだけでよいのだから、石炭とは随分と火持ちのよい燃料だ。燃えている石炭の実物を見たのはこのときが初めて。さすがは炭鉱で有名な山西省を走る汽車だと感心した。

北京西駅に着いたのが夜7時頃で、そく北京駅に駆けつけたが、上海行きの夜行列車はすでに発車してしまったか、または、すでにチケット完売。
しかたないので南京行きの夜行の軟臥のチケットを購入。
とりあえず南京まで戻ればあとは何とでもなるからだ。

ちなみに、上海で生活していると、南京や杭州はいわゆる「上海圏」と感じるようになる。遠方に出かけたときも、その範囲内まで帰ってくれば、「なんとか無事に帰ってこれた」と安心するようになる。
しかし、実は、上海と南京は300キロ以上離れており、東京名古屋間の距離とそれほど変わらない。上海と杭州でも200キロだ。日本国内の旅行なら、自宅から200キロ地点まで戻った時点で「やれやれ、無事に帰ってこれた」と安堵することは普通ない。
中国の大きさをあらためて知る。

南京行きの軟臥(1等寝台)は、北京−上海間を走っている豪華寝台と同じ客車を使っている。4人用のコンパートメントは清潔で快適。各ベッドごとに液晶テレビがついており、5,6チャンネルの車内放送をしている。内容は映画やバラエティー番組、ニュース番組など。

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ちなみに、これらの大都市間(北京−上海、北京−南京、上海−香港など)を走る豪華寝台車に、中国の鉄道当局は相当に力を入れている。一番値段の高いコンパートメントは4人用コンパートメントと同じ広さの室内にベッド2つとリクライニングチェア、そしてシャワーが設置されている。

また、その力の入れようは、車内の雑用(チケット管理や清掃など)をする女性係員が不必要に可愛いことからも見て取れる。食堂車のウエイトレスさんに至っては、美形と言っても良いほどの力の入れようである。

北京上海の飛行機は割り引きチケットでも900元くらいが普通だから、500元でこれだけ便利で快適な旅ができるなら、私ならむしろ寝台車を選ぶ。都心−都心の直通であるし。

さて私は、「アルマゲドン」を見ているうちに眠ってしまった。なお、この日の他のチャンネルでは日本軍の南京侵攻のドキュメンタリー番組もやっていたようだ。

朝7時頃に南京到着。3年ぶりの南京には、いつの間にか綺麗な地下鉄が敷設されていた。ここの地下鉄は、チケットがプラスチック製の薄くて丸い円盤(ゲームで使うチップのような形状)であるのが面白い。中にICチップが入っているのだろう。再利用するときでも洗浄すれば容易に清潔を保てるし、乗客にとっても扱いやすいので、非常にすぐれたアイデアだと思う。

南京から上海までは高速バスで4時間程度。
やはり上海まで帰ってきて初めて本当に「やれやれ」という気分になれる。




posted by 陳ゆう at 11:00 | 旅の記録 雲崗石窟 山西省 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする