2011年11月16日

天空の棺 僰人の里(四川省洛表) 長江文明


8年ほど前、NHKで、『中国 天空に浮かぶ棺 絶壁に葬られた民族の謎』という番組をみた。
長江文明の末裔と推測されるその民族は、下の写真のように、高い崖に杭を打ち木棺を載せて死者を弔う風習を持っていた。

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中国語で「僰人」(ボウ人)と呼ばれるこの民族は、紀元前10世紀頃から歴史に記録され始め、一時は四川省、貴州省あたりで相当の勢力を持った。しかし、明代に漢民族の支配下に入ることを拒んだことにより、12度にわたる攻撃を受けて、最終的には1573年の戦闘で滅亡したとされる。

末裔は確認されていない。
絶壁に浮かぶ木棺と、岩絵と、民間伝承が残っているのみ。
彼らの宗教観がどのようなものなのか諸説あるものの、結局は謎になっている。

彼らが滅亡してすでに400年以上が経っているが、絶壁に掲げられた木棺のうちいくつかは、今でもそのまま残っている。
四川省の山奥の街「洛表」まで、この不思議な「僰人」(ボウ人)の木棺を見に行ってきた。


洛表への行き方

四川省洛表は、雲南省や貴州省との境界に近い山奥の集落。
雲南省や貴州省側からは公共交通機関がないので、四川省から入る。

現地でのGPSの表示はこんな感じ。

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成都から洛表への交通は次のとおり。

成都→宜賓 高速バス    3時間30分
宜賓市内を移動  路線バス   40分
宜賓南岸バスターミナル→珙県 長距離バス 1時間10分
珙県→洛表 長距離バス   2時間30分


成都

今回はANAの直通便で夜遅くに成都に着いて、一泊。
翌朝の長距離バスで宜賓に向かった。

成都は長距離バスターミナルが行き先によって分かれていて、よそ者には非常に分かりにくい。
宜賓への長距離バスが出るバスターミナルは少なくとも3か所ある。
便利なのは北門バスターミナル。成都駅からほど近い場所にある。

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成都から宜賓までは300キロほどの道程。高速道路が整備されているので、3時間半程度で到着する。
バスは大型のエアコン付きバス。

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宜賓

宜賓についたバスは、市内には入らず、インターチェンジすぐ横の高速バス専用のバスターミナルに到着する。
新しくできた、広く明るいバスターミナル。内部には航空券の販売カウンターまで併設されている。
ただし、周囲にはほとんど何もない。

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珙県行きのバスは、このバスターミナルではなく、市街地を挟んだ反対側に位置する「南岸バスターミナル」から出る。
高速バスターミナルから「南岸バスターミナル」に向かう路線バスは、本数が多くて便利。
高速バスの降車場のすぐ横に、南岸バスターミナル行きの路線バス(第4路線のバス)が、常時、客待ちしている。

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これに乗り換えて40分程度。
料金は、エアコン付きの車両で2元。

宜賓は都会と言ってもよい規模の中都市だ。
ビルが立ち並んでおり、商業も栄えている印象。

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人の動きも多いので、バスは途中で満員になる。
宜賓の市街地を横断して、終点が南岸バスターミナル。

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ここから珙県行きのバスに乗る。
珙県へのバスは、6:15〜18:00の間、15分ごとに出ている。17元。

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このあたりは石炭がとれるようで、道路からもいくつか炭鉱を見かけた。
大型のトラックが、石炭を満載して走っている。
石炭火力発電所もあった。

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珙県

珙県は意外に大きな町だが、バスターミナルはない。
バスは下の写真のロータリーで客を降ろす。

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青い案内板には、「僰人悬棺」の表示も見える。
まだここから車で2時間以上も山を越えていくのだけれど。

この地域には天然ガスが豊富に産出するらしく、市内を走る路線バスはルーフに燃料のガスを入れる黒い巨大なバッグを載せている。
このバッグ、走行して風を受けるとバタバタあばれるので、なんだか怖い。

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宜賓からのバスを終点で降りて、すぐ前の交差点を右に曲がった路上が「洛表」行きのバスの発着場所になっている。
「洛表」行きのバスは頻発しているので、行けばさほど待たずに乗れる。
但し、相当に混雑するので覚悟が必要かも。

下の写真の中央辺りにお尻を向けて写っている緑色のバスが洛表へのバス。

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このバスは、いくつもの峠を越えて2時間半も走る。運賃は28元。
このあたりの農村はとても美しい。
山の中腹にコンクリート造りの民家が点在している。
山奥ではあるけれど、人里離れた場所という印象はない。

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途中の峠に、こういう碑がある。
男性の乗客がぜひ写真を撮れと言って、運転手に声をかけて一時停止してくれた。
残念ながら私にはその価値がよくわからないが、相当に重要な文化財らしい。

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こんな山奥でも、30分くらいごとに立派な集落がある。
中国の経済発展の恩恵は、確実に農村部にも及んでいる。

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洛表

朝に成都を出て、洛表につくのは夕方。
洛表の町は、数百メートルくらいの通りの両側に商店や学校や裁判所が並ぶ。
町というよりは「集落」と呼んだ方がよいかも。

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小学校

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裁判所

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こんな山奥でもちゃんと携帯電話の鉄塔が建っている。


町のほぼ中心には「ボウ人の里」という大きな碑がある。
自分たちで絶滅させたボウ人を観光資源として利用するとは。
漢民族は実にあっけらかんとしたものである。

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宿は3,4件ある。宿代は定価で数十元から100元くらい。値切れば多少は安くなる。

洛表の街には、あまりちゃんとした飲食店はない。
数軒ある食堂も、衛生状態はあまり良くなさそうだ。

夕食を食べようと食堂に入ると、メニューはなく、
「何を食べるか」
と聞かれた。
「麺が食べたい」
というと、
「そこに座れ」
と席を指さされた。
麺の種類は質問してくれない。「麺」は「麺」らしい。
スープの種類だけは聞いてくれたので、
「辛くないやつ」
と頼んだら、わかったと言って作ってくれた。
出てきた器をみたら下のとおり、真っ赤だった。5元。

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滅茶苦茶辛い。やはり四川省だ。この程度は辛いうちに入らないのか。
カップ麺を持ってくればよかったと思った。



天空の棺

翌朝は早起きして、碑の前で客待ちをしているバイクタクシーに声をかけて、「天空の棺」のある場所まで行ってもらった。歩いても30分程度らしい。涼しい季節なら歩いてもよいが、この炎天下では熱中症になりそう。バイクなら数分。言い値で8元だった。

途中に下の写真のゲートがある。
結構立派なゲートだけれど、別にここを境に何かが変わるわけではない。ここから先に進む旅行者から金を取るためだけに存在するゲート。入場料は20元。

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このゲートを避けても先に進めるらしいけれど、入場料を払わせることに関してはここの村人は熱心だ。入ってすぐのところで、地元民の足になっている乗合タクシーが近寄ってきて、「あんた入場料払ったか」と聞かれた。「払った」と答えたら、「入場券を見せてみろ」というのでさっき受け取った入場券を見せてやった。

「天空の棺」があるエリアは、両側を断崖に挟まれた幅2、300メートル、奥行き2,3キロ位の谷間。
断崖の間の長細い土地はすべて農地になっていて、民家も沢山ある。
民家の多くはコンクリート造りの綺麗な建物で、半数以上の家には衛星テレビのパラボラアンテナがある。バイクや車が止めてある家も少なくない。

もっと人里離れた幽玄たる環境を想像していたので、意外だった。
都市からは離れているものの、人間が普通に生活している集落だ。
生活レベルもまあまあの印象。


入口ゲートを入ると、すぐ左側の断崖に、はやくも最初の懸棺が見える。
数の点では、この場所が一番多いよう。

「僰人」(ボウ人)が滅亡したのは1573年だから、一番新しい木棺でも438年以上は経過しているはずだ。こんな不安定そうなものが残っていること自体が不思議。

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狭い階段を、棺の近くまで登っていける。

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階段を上った高台から、「天空の棺」のある谷を見下ろせる。

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私の最終目的地は老鷹岩と呼ばれる場所。
老鷹岩では、数百メートルの断崖の遙か高い位置に、懸棺が掲げられているらしい。
ここを目指して、谷間を先に進んでいく。

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両側に農家が点在する田舎道をぶらぶら歩いて奥に進んでいくと、途中の岸壁に、何箇所か、棺がかたまっている場所がある。

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老鷹岩

老鷹岩と呼ばれる絶壁は、この谷の一番奥にある。

現地には案内板など立っていないので、なにも手掛かりがないと辿り着くのに結構苦労するだろう。
今回の旅では、ネットを検索して見つけた小寺祐介氏のサイトにあった旅行メモを参考にさせてもらった。

情報ノート 【四川省の秘境!ボウ人・懸棺】

この資料がなかったら、辿り着くのに10倍苦労しただろう。

なお、小寺氏のサイトはジオシティーズにあるので、中国国内からは見ることができない。
日本でプリントアウトして持っていくのがよいと思います。

このメモの情報とやや状況が変わっている個所があったので、補足しておく。
「情報ノート」3頁目の「正面に池があるレストランのような建物」と記載のある箇所。
老鷹岩に向かうにはここでメインの通りを外れて細い道を進むことになる。
情報ノートの地図では、上記の建物の前を右折し、小川を越えて、畦道を進むとなっているが、現在はこの畦道の先の人家が放棄されており、人の行き来がないため、草ぼうぼうで進むのに苦労する状態になっている。

お勧めのルートは、言葉で説明しずらいので、下に地図を付けておく。
なお、「情報ノート」の地図とは上下が逆になっている。

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要は、レストラン風建物の前で小川を右に越えたあと、少し先でもう一度小さな橋を渡って小川の左側に出て、そのまま小川に沿って奥に進んでいくことになる。

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レストラン風建物 この前を右折して小川を渡る


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手前の橋を渡り、白い建物の手前を左に入っていく


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白い建物を過ぎたあたりで、再度小川を左に渡る。

その後も道なりに何度か小川を渡るが、要はずっと小川沿いに田園風景の中をぶらぶら歩いていけばよい。
谷の一番奥が老鷹岩。

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ここが谷の突き当たり。
奥の右側の断崖が老鷹岩。


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谷の一番奥の人家。今は廃屋になっている。
その先に見えるのが老鷹岩。


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老鷹岩全景。
てっぺん付近の張り出しの下に、黒い粒のように見えるのが木棺。
この写真はクリックして拡大してみていただきたいところ。


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いったいどうやってこんな所に木棺を設置したのか、ちょっと想像がつかない。
嵐や地震もあったろうに、400年以上も残っていることも驚き。



帰路

朝早くから動いたので、12時前にホテルに戻ることができた。
汗だくになったので、シャワーを浴びてからチェックアウト。
バスターミナルまでぶらぶら歩く。

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奥地の王家という集落から来たバスに途中乗車。
12時20分に乗車して、珙県には14時50分に着いた。

珙県でこの日最初の食事。
きれいらしい喫茶店風の店を見つけたので、豚肉チャーハン(18元)とスイカジュース(18元)の遅い昼食をとる。

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バスの発着場所まで戻るのが面倒だったので、通りに立ってバスを待った。
ちょうど成都への直通バスがやってきた。
手を挙げて乗車。
この直通バスは珙県発16:00で、1日に5,6便あるらしい。
成都では、成都駅の裏手にある五塊石バスターミナルに発着する。

ただし、このバス会社(灰狗客運)は乗務員があまりガラがよくない。
そのうえ料金も不明朗。
私は路上で手を挙げて乗車したら成都まで80元だった。しかし、始発地点で乗車した人は100元以上払わされていたようで、なんか揉めていたようだった。数百メートルの違いで、なぜ20元以上も料金が違うのかということのよう。
ちなみに、後でネットで調べたら正規の料金は77元だった。


成都まで戻り1泊。
翌日は大足石刻に向かった。
大足石刻は別稿で。




posted by 陳ゆう at 00:22 | 旅の記録 天空の棺 四川省洛表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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