2012年07月07日

香港 旧尖沙咀駅の時計台


自分はグルメでもおしゃれでもないので、香港にはあまり興味がなかった。
これまで香港には何度か寄ってはいたけれど、目的は中国ビザの取得とか、その他の所用のみで、ほとんどシンセンから日帰り。用事が済めばさっさ立ち去るのみ。

かくも香港に興味のない私だけれど、今回、珍しく所用以外の目的で香港の街を歩いてみました。
行き先は、尖沙咀 (Tsim Sha Tsui)の時計台。
この時計台は、1916年に広九鉄道の尖沙咀駅の鐘楼として建設された。
鉄道駅は1975年にホンハムに移転したが、この鐘楼はそのままここに残された。

clock.jpg

場所は、ペニンシュラホテルの向かい側。
時計台のすぐ先はスターフェリーの埠頭。
香港海峡を挟んだ対岸に見えるビルは、香港島セントラルの高層ビル街。

この時計台の海側の壁面を見ると、

clock2.jpg

石造の外壁に、ポチポチと、セメントを詰めた跡が見える。
もう少し拡大すると、こんな感じ。

clock3.jpg

clock5.jpg

これは何かというと、イギリス軍の日本軍に対する砲撃の跡。

1941年12月8日の午後、日本軍は中国広東省から深圳河を渡って香港に侵攻した。5日間の戦闘を経て、九龍半島は日本軍の手に落ちる。
英国軍は九龍半島を放棄し、香港島に後退して防戦した。
その戦闘の跡がここに残っている。

clock4.jpg

今は日本人観光客もあふれるスターフェリー埠頭(上の写真)。
当時は、こちら側に日本軍、対岸に英軍が陣取り、砲弾を打ち合った。
日本軍が深圳河を越えてから18日目、12月25日のクリスマスの日、英軍は降伏し、香港は日本の占領下に入った。
日本による占領はこの後3年8カ月続く。

70年ほど前のこと。

さりげなくこういう痕跡が残っているのが、なんだか不思議。




posted by 陳ゆう at 21:30 | 旅の記録 その他の街 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月07日

重慶マンション (香港・重慶大厦)

重慶マンションに関しては、「怪しくて治安の悪い安宿」というイメージをもっていた。
1階の両替屋やネットカフェは何度か利用したことがある。香港で両替レートのよい両替屋といえば重慶マンションなのだ。
しかし、階上のゲストハウスに宿泊したことはなかった。いかにも香港らしいカオスな場所として魅力を感じてはいたのだけれど、出入りする多国籍な人々を眺めただけで、ごちそうさま、という感じだったのだ。

最近、大手のネット予約サイトが重慶マンションのゲストハウスの予約を取り扱いはじめた。香港のホテルを検索して、値段の安い順にソートすると、重慶マンションのゲストハウスがずらっと表示される(→Agoda Hongkong Hotels)。それで興味をもち、気楽な一人旅だったので、試しに一晩だけ予約して泊まってみた。

重慶マンションの場所は下の地図のとおり。


大きな地図で見る

宿泊体験記の前に、重慶マンションについておさらいを。
ネットの情報をまとめると、重慶マンションの来歴はおおむね次のような感じ。

重慶マンションの竣工は1961年。今年で築52年になる。17階建。住宅は770区画あり、分譲販売され、それぞれ個別の所有者に帰属している。低層階は店舗になっている。
建設された当初は、香港の一等地に建設された高級ビルとして知られた。東京で言えば六本木ヒルズみたいなイメージの建物だったらしい。

ところが、区分所有者が多数であったことで、建物のメンテナンスや改修に関する意見がまとまらず、長年にわたり適切な維持管理がおこなわれてこなかった。
このため、建物共用部や外装の老朽化が進み、周囲の新しいビルと比較すると見劣りする建物になってしまった。

立地だけは最高だったので、多くの住人が自宅マンションを改装してゲストハウスの経営をはじめた。建物が老朽化していたので、これらのゲストハウスの宿代は香港にしてはきわめて安価に設定された。いわゆる安宿である。
重慶マンションは、貧しい国から香港にやってきたばかりの手持ちの金に乏しい人たちが、まずやってくる場所になった。長期滞在者の多くは、南アジアやアフリカから出稼ぎに来た低賃金労働者だった。その人数は約4000人に及んだ。

かつて、香港中文大学の人類学の教授が重慶マンションに興味を持った。彼は1年間、週3日重慶マンションのゲストハウスに宿泊して調査をおこなった。彼が1年間で出会った人々の国籍は120に及んだとのことである。

1993年、重慶マンションの電源室で、爆発事故が発生する。設備の老朽化が原因だった。10日間にわたってビル全体が停電、断水した。
これがきっかけとなり、区分所有者らが資金を拠出しあってビルの大規模修繕をおこなうことが決定する。痛い思いをしたことで、ようやく話がまとまったのだ。

1999年、改修工事が始まる。費用は1300万香港ドル。工期は5年。
2004年5月、工事は完了し、現在の姿になった。ネイザンロードに面した外壁は再塗装され、以前に比べれば大幅に小綺麗委になった。これにより、入居している商店の売り上げは大幅にアップしたとのこと。
改装前と改装後の外観はこのように変わった。

chongqing_old.jpg

改修工事と並行して、区分所有者らが費用を出し合って、警備会社や清掃会社と契約し、さらにビル全体で208台の監視カメラを設置した。これにより、ビルの共用部分は毎日清掃されるようになり、また、以前のような違法薬物の売買や売買春の客引きはほぼ一掃されたとのことである。

しかしそれでも、長年のイメージの悪さは修復することができず、また、依然としてゲストハウスの居住者の多くが南アジアやアフリカから出稼ぎに来た低賃金労働者であることから、香港での重慶マンションのイメージは依然として好ましいものではない。
香港の安宿の代表でありつづけているわけである。


さて、こういう重慶マンションに宿泊するにあたって、重慶マンション初心者の私は、Agodaで予約しました。Agodaの検索結果をずずっと見ていって、日本人の口コミが多くて、評判がよいところを選んで予約。
予約したのは、ニューチャイナ・ヤンヤン・ゲストハウス(New China Yan Yan Guesthouse)

シングル1泊で、日本円で2500円〜3000円くらい。香港のど真ん中のど真ん中で、この値段は安い。安いけれど、重慶マンションのゲストハウスとしては、まあまあ良いほうの部屋のはずである。


重慶マンション

重慶マンションは、ティムサーツイの地下鉄駅を出れば、目の前のネイザンロード沿いにそびえている。初めての人でも、地図を見るまでもなくたどり着けるはず。

2004年の改修工事のおかげで、以前のぼろいビルではなくなっている。少なくとも外見は。

chongqing41.jpg

正面入口を入り、雑多な商店の間を抜けて、奥のエレベーターへ。エレベーターは、ブロック別(A〜D)に2台づつあるので、自分が泊まるゲストハウスのブロックのエレベーターに乗る。

重慶マンションはもともとは普通の住宅用マンションなので、商業ビルのように多くの人が頻繁に出入りすることを想定して建てられていない。その結果、重慶マンション名物のエレベーター待ち行列が発生する。

chongqing28.jpg

ゲストハウスの多いA区やB区のエレベーターの混雑は特にひどい。
ヤンヤンゲストハウスは、比較的ゲストハウスの少ないD区にあるので、エレベーターの混雑もややましなほう。それでも上の写真の行列だ。
エレベーターの定員は7名なので、この列に並ぶと運が良ければ2台目、もしかすると3台目のエレベーターにようやく乗れる。

エレベーターの行列には迷惑するが、ゲストハウスの利用者はこの状況に不満を言うべきでない。一番迷惑しているのは、ここの本来の住民の方々なのだから。
重慶マンションには、ゲストハウスに転用されていない一般の住宅もたくさんある。そこの住人は、ゲストハウスの利用者のせいで、日々の生活で不便を強いられている。

ちなみに、このエレベーターの列は非常に整然としていて、割り込みをする人などいない。列が長くなっても、おとなしく並んでいる。途上国出身者がほとんどだが、みなとてもマナーがよい。
大柄な男性が乗って重量オーバーのブザーがなったときには、後ろの小柄な女性に「あんた先に行け」と勧めていた。互いにどこの国から来たのかわからない人どうしが当たり前のように譲り合っている光景を見ると、なんだかほっとする。
いつも辟易している中国本土の公共マナーの悪さは、「中国が途上国だから」ではなく、「中国が中国人の国だから」なんだろう、と重慶マンションに集まった人々を見ていて思った。


ニューチャイナ・ヤンヤン・ゲストハウス

9階でエレベーターをおりたら、右手にゲストハウスの入口があった。もとは個人用の住宅なので、入り口もそれ風である。ちなみに、左隣の区画は、ゲストハウスに改装されていない一般の住宅である。
日中はスタッフが常駐しているので、この扉は開け放ってある。夜10時にスタッフが施錠して帰ってしまうので、以後の出入りは自分で鍵を開けなければならない。

chongqing33.jpg

受付にはトーゴ出身の黒人男性が座っている。予約してあると告げたら、机の電話でオーナーに電話をかけ、受話器を渡された。オーナーは香港人のおじさん。英語で対応してくれる。広東語でもOKだろう。普通語での会話が可能かは不明。
電話でAgodaの予約番号を確認したあと、男性スタッフから玄関と部屋の鍵を受け取る。
こういうシステムになっている関係上、チェックインはスタッフが受付にいる夜10時までと思われます。

玄関を入ると、短い廊下の両側に部屋が並んでいる。
廊下には、共用の冷蔵庫、洗濯機、ポットがある。

chongqing21.jpg

chongqing35.jpg


chongqing23.jpg

部屋は、4畳半くらいの広さで、バスルームとベッドが作りつけられている。
いわゆるアメニティーの類は一切ないが、トイレットペーパーだけは受付の黒人が部屋まで届けてくれる。

室内写真はうまく撮れていなかったので、下の2枚の室内写真は、Agodaのサイトから借りている。

chongqing42.jpg

chongqing43.jpg

部屋はせまいが、ベッドの下に荷物をおけるので、大荷物でも問題ない。
中国製のブラウン管テレビ、ドイツ製の電気給湯器、エアコン。天井には大きな扇風機があり、上からベッドに風が来るようになっている。暑い香港の夏でもなんとかしのげそうだ。

インターネットはWifiが使える。Agodaのレビューで電波の入りが悪かったという書き込みがあったが、この日泊まった部屋は安定して接続できた。

ほかの人の宿泊記を読むと、重慶マンションのゲストハウスはバスルームの手持ちシャワーを壁に固定するホルダーがないところが多いらしい。
ヤンヤン・ゲストハウスは頭の少し上のあたりの位置にホルダーがあるので、髪を洗う時に便利。湯量も十分だった。
改装して間もないようで、タイルの目地の黒ずみもなく、清潔感がある。

chongqing31.jpg

重慶マンションの入口は、夜はこういう状態になる。
1階のフロアには警備員もいるし、一晩中人が出入りしているので、あまり危ない感じはしない。表のネイザンロードは、深夜になっても人通りが多いので、夜遅くに帰ってくるときも安心。

初めて重慶マンションに泊まってみた印象は、想像していた以上によい、という感じ。
何より、立地がすばらしく便利。ティムサーツイの駅の真ん前ですから。スターフェリーの乗り場にも歩いて行ける。
確かに部屋はせまいが、一人旅なら寝られればよいのだから、何の問題もない。

ヤンヤン・ゲストハウスのチェックアウトは午前11時。
朝の散策から戻ってチェックアウトし、1階に下りると、ちょうど食べ物屋が開く時間。
チキンカレーのハーフカップとプレーンパラタを食べた。

chongqing39.jpg

この店の主人はターバンを巻いたインド人。
通路におかれた簡易テーブルでスパイシーなカレーを食べていると、なんだかもっと旅行を続けたい気分になってくる。

chongqing40.jpg


今回の宿。

ニューチャイナ・ヤンヤン・ゲストハウス
(New China Yan Yan Guesthouse)

簡素ですが、清潔感はあります。
1泊2500円〜3000円程度。



posted by 陳ゆう at 23:37 | 旅の記録 その他の街 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする